私が小学生だった昭和40年代(古い!!)、家の中でひとり遊んでいたい自分を母が良く買い物に連れ出しました。野菜、肉、魚など、生鮮3品の殆どを近くの個人経営の商店で買い求めていました。
「奥さん、今日はこの秋刀魚、活きが良くて美味しいよ!買わなきゃ損だよ!!」
「あら、ホント、でもこちらの方が鮮度がよさそう、脂ものっているし・・・こっちにするわ。」
「あと、このアジ3枚におろしてもらえる?それとこのマグロはお刺身用に切ってね」
「アイヨ~奥さん!いつもありがとね!!このサケの切り身一枚サービスね!」
こんな調子でお店の若衆と買い物客との間で丁々発止のやりとりがあちこちで始まります。
このような活気が現代の小売りの現場から消えて久しくなります。店頭に露出した対面量り売り販売は見ていて楽しいものでした。魚もお肉もできるだけもとの状態で陳列され、注文を受けてから手際よく切り捌かれてお客さんに手渡されて行く・・・ライブ感いっぱいで子供心にも強く印象付けられた一こまです。
最近はスーパーでもきれいに切り分けられ個別にパックされているものばかりになりました。そのほうが効率面でも衛生面でも良いということなのでしょうが、パックの中でも生鮮品の品質は確実に変化していきます。
コーヒー豆も生鮮品です。生鮮品は刻一刻その品質を変化させていきます。きれいなパッケージに包まれて陳列されているコーヒー豆も時間の経過と共に変化してゆきます。店のスタッフはその変化を皮膚感覚で感じ取り、コーヒー豆たちと対話しながら店頭にある商品の品質が常に適正である状態をキープしなければなりません。店頭に並べて「OK」の世界ではありません。あらゆる手段を使って鮮度と品質を保たなければなりません。
より良い商品を得て頂くためにはお客様にもコーヒーの特性を理解して頂きたいと思います。誤解を恐れずに言えば、「焙煎後の鮮度が良いコーヒー豆ほど味の経時変化が大きい」ということです。コーヒーの味わいには「ゆらぎ」があり、常に同じ味わい、と言うことは厳密に言えばありえないのです。五感を駆使して「自分にとってベストなコーヒー」を探し出してください。きっと「悩ましくも楽しい経験」が待っていると思うのです。最近ではお客様にいろいろな情報を教えて頂くことも多くなりました。双方向の情報交換でより活きの良い売り場を作っていくことが出来れば幸せなことだと考えています。
さて、買い物は楽しくなければなりませんね。その大前提として商品にはお値打ち感があり、品質はお客様のご期待に応える、またはそれを超えるものであること、そしてもう一つ大切なことは「選択の幅」です。スペシャルティー、プレミアム、コモディティー、御予算の範囲のそれぞれの商品群でご期待通りの満足感を得て頂くために私たちは最大限の努力をいたします。
1983年の創業以来、私たちは「実需に即した商品群」を取りそろえてお客様をお迎えしてまいりました。豊富なラインアップに加えて、最近では単一農園もしくは限定された地域で栽培され精選方法にもこだわったシングルオリジンコーヒーも提案させて頂いております。いま話題の「シングルオリジンコーヒー」ですが、スペシャルティークラスのこれらの商品も当店では「あまり高くない価格」であることにお気づきになられると思います。誤解して頂きたくないのですが・・・私たちは決して「安売り」はしません。もちろん店頭においては「特売日」はあります、が、すべて「回転」させるための手段です。
生産者が多くの手間隙をかけた「大地の恵み」たるコーヒー豆たちの本来持っている魅力を存分にお客様にお伝えしたいが為の価格設定だと御理解下さい。
これからも一般の消費者の皆様にはより高い満足感を、飲食店 、喫茶店やカフェ経営者の皆様には末永いお店の繁栄を得て頂くために最大限のお手伝いをさせて頂きます。
楽しいお買い物を・・・
2013年、インドネシア スマトラ島トバ湖畔パラパットのホテルよりトバ湖を望む